第32章 情愛の行方【イケ戦5周年記念】明智光秀編
光秀 「聞け。
あの時家康が見た口付けはただの戯(たわむ)れだ。
お前をからかってやろうと思ってな。
莉乃と俺は恋仲ではないぞ。」
あの時の家康の様子を思い返して、笑いが出る。
その途端___
家康は持っていた杯を放り投げ、こちらに向かってきたと思ったら俺の胸ぐらを掴んできた。
あまりの怒りの熱量に、その理解不明な行動に。
俺は驚きのあまり為す術もなく掴まれたままになっていた。
政宗 「おいっっ!!」
秀吉 「家康っ、やめろ!!」
慌てて止めに入る秀吉と政宗。
目を細めて上座からこちらを見ている信長様。
三成は悲しそうな目をしている。
___一体何が起きている?
家康 「からかうって何ですか!
俺のことはいいですけど、莉乃は・・・
莉乃の気持ちを利用するのだけは許さない。」
全身から怒りをたぎらせ、押さえに入った秀吉と政宗をうざそうに手で払う。
秀吉 「戯れ??
光秀・・・いくらお前でも・・・それは酷いぞ」
政宗 「・・・お前に莉乃は任せらんねぇな。」
家康はともかく、この二人からも急な温度差を感じる。
光秀 「・・・」
信長 「阿呆が。
光秀、貴様は誰よりも物事をよく見て裏のその裏まで読むことには長けているが・・・
自分に向けられたものに対しては疎いようだな。」
光秀 「はい?」
信長 「この件は光秀本人に解決させろ、貴様らの手出しは無用だ。
光秀、俺の験担ぎで戯れることは許さん。
俺は天主に戻る。後は勝手にやれ。」
信長様はそう言うと羽織をひるがえし、さっさと広間を出て行ってしまった。