第31章 情愛の行方【イケ戦5周年記念】基本編
この間、莉乃に浮いた話などない。
当初、夜伽を命じた信長様ですら、莉乃が断ったことを受け止めて、未だに手が出せずにいる。
一応、信長様の験担ぎとしての役割もあるため、武将たちはお気に入りとはしていても、実際には手が出せずにいた。
家康を追っていたと言うことは・・・
莉乃は家康が・・・?
二つの皿を空にしたのを確認し、莉乃に問いかける。
「3皿目に行くか?」
「いえ、さすがにもう!
これ以上食べたら帰り道、光秀さんに転がしていただかないと動けなくなりそうです」
「そうか。俺は転がさないぞ?放置して帰る」
「そんなぁ・・・自力で転がるしかないか・・・」
「くっっ」
思わず笑ってしまった。
500年後の女はみな、莉乃のようなのだろうか?
自ら遊び心のある発言をしたり、機知に富んだ返答をする。
たとえ武将が相手でも。
こちらが意地の悪い発言をしても、目を伏せたり恐れたりしないで臆せずに返してくる。
こういった所を『莉乃は唯一無二』として信長様も他の武将も気に入っているのだろうが、こうして目の当たりにするといつまでも話していたい気持ちにさせられる。
「莉乃、お前と他愛ない会話をずっとしていたいところではあるが。
そろそろ本題に入ろう」
甘味を食べて笑顔が戻ったと思ったが、また静まりかえってしまう。
「家康に惚れてるのか?」
単刀直入に聞くと、首をぶんぶんと横に振った。
「ちがっ!!違うんです!
私がここに来て5年、今まで家康に彼女がいるって聞いたことなくて。
私が知らないだけかもしれませんが・・・
それがたまたま先ほど、家康と女の人が一緒にいるのを見かけてしまって。
家康の彼女ってどんな人かな、って興味本位でついて行っただけなんです・・・
でも人の逢瀬についていくなんて・・・
するべきじゃありませんでした。」