第31章 情愛の行方【イケ戦5周年記念】基本編
この娘が500年先より飛ばされてきた日は、俺にとって、いや・・・
信長様、織田軍の武将達にとって、大きな変化をもたらす日となった。
暗殺されかかっていた信長様の命を救ってくれたことは勿論、世話役となって日々一生懸命に働く莉乃は、いつの間にか織田軍の全員にとってかけがえのない存在になっていた。
信長様が『織田家ゆかりの姫』として扱う、化粧や貝合わせでもして遊んでいろと言ったにも関わらず・・・
自ら仕事を所望し、姫とは思えぬ働きで世話役に加えて針子から掃除までこなす様には、武将どころか家臣たちまでもが驚き、心を動かされた。
美しい姫は働き者で、身分の上下に捕らわれない優しいお方だと。
三成の言葉を借りれば、莉乃は「日ノ本一、美しい姫様」らしい。
今では城内だけでなく城下にも莉乃を慕う者は多くなっていた。
武将たちが皆莉乃を気に入り、なんだかんだと理由を付けて構っているのは誰が見ても分かる。
おそらく、気付いていないのは本人だけだろう。
500年後の平和で戦のない世から来たという莉乃の言動には驚かされることも多く、この時代の女とは一線を画していた。
明るくて、真っ直ぐで、でも、少々頑固なところもあり。
芯が強いと思えば、他愛もないことで目を潤ませる。
ころころと変わる表情、すぐ顔に出る分かりやすい感情に、武将たちが絆されるのは無理もない。
莉乃が来てもう、5年か。
その頃の事がつい昨日の事のように思い返された。