第31章 情愛の行方【イケ戦5周年記念】基本編
太陽がじりじりと顔を焼いてくる。
汗を浮かべた莉乃をこのまま炎天下に晒しておくのも気が引け、さらに話を聞くために近くにあった茶屋に連れて行った。
冷たい茶を二つと、莉乃用に甘味を注文してやる。
しょんぼりとした顔をしながらも莉乃は運ばれてきた茶に口を付け、さらに季節限定だというわらび餅を口に運ぶと・・・
急にぱっと表情が明るくなった。
その様子に茶を吹きそうになる。
「『花より団子』を何の脈略もなく地で行く人間、初めて見たな・・・。」
死なない程度に何か腹に入れば良いと思っている俺には、甘味で気分が明るくなる事は決してない。
が、こうして美味しそうに食している莉乃を見ているのは、なかなか気分が良いものだった。
店員を呼び寄せ、追加の甘味を注文した。
「えっ、そんなに食べられません」
という大嘘をつく莉乃を尻目に。
まったく・・・店の在庫を空にしそうな勢いで食べておいてそんなことを言うとは。
結局、追加で運ばれてきた餅ももぐもぐと頬張りながらニコニコと次の獲物へと黒文字を刺し、また口へと運ぶ莉乃を眺める。
先程のような暗い顔をさせておくより、口にきな粉をつけて笑みを浮かべている方がよっぽどいい。
俺は___闇、陰謀、諜報。
いわゆる裏稼業を得意としている。
仕事とあれば汚いやりとりも、人を騙すことも、捕まえた敵に拷問をかけることもいとわない。
生きていくのは薄暗い裏道だ。
太陽の下でまっすぐ生きる莉乃とは真逆だった、何もかもが。