第31章 情愛の行方【イケ戦5周年記念】基本編
「そこまで驚くことではなかろう。」
「光秀さん!? なっ、何をしてるんですか!!」
「お前こそ何をしているのだ、家康をつけ回して。
しばらく見ていたが・・・
動きが不審者のようだったぞ。
尾行をしていたならば、下手すぎる。」
「つけ回すだなんて・・・私が、ふ、不審者・・・!?
下手って・・・」
いつもは快活に話をする莉乃が下を向き、珍しく口ごもっている。
顔に全ての感情が出てしまう莉乃。
下唇をきゅっと噛み、憂いのある表情から見て取れるのは、不安と興味それから・・・
「光秀さん・・・あの・・・
お願いですから私が家康を付けてた事・・・
誰にも秘密にして下さい。」
見られた恥ずかしさだったか。
こんなに困った顔をして見せて、馬鹿娘が。
腹の中に様々な感情が灯るのを打ち消し、頭の中でめまぐるしく浮かぶ策を選び取っていた。
少しばかり、遊んでやるか。
「お前と秘密を共有して、俺に何の利があるのだ?」
きっと答えられないだろう莉乃に質問をする。
それでもチラチラと家康の方を気にする莉乃。
二人はどんどん遠ざかってゆく。
なぜか、莉乃の視線があちらへと向けられるのが気に入らない。
「光秀さんにとっての利は・・・ないです・・・」
口を横一文字に結び、両手を握りしめている。
その姿に、思わず俺らしくない言葉が出てしまった。
「俺は家康を追うお前を付けていた。
ということは家康を追ってたと同じ事。
俺を共犯にしたくば、なぜ追っていたか理由を話せ。」