第30章 御伽の国の姫~別館~【豊臣秀吉】R18
「秀吉さん?」
「『後で聞かせて』って言ってた劇の感想を言ってなかったな。
あんなに大勢の客の前で堂々と演技してるお前を見て、誇らしかったぞ。」
そう言うと、腕の中にすっぽりと包み込まれた。
あぁ、この場所がやっぱり一番落ち着く。
暖かさも、厚みも、香りも。
秀吉さんの全てがしっくりくる。
「あとな、正直・・・
芝居だって分かってるのに、他の男に手を出されてるお前を見て焦っちまった。
舞台に上がって俺の女だって言ってやりたくなってな。
バカだな、俺。」
困ったような声のトーンを発した唇が首筋に触れる。
「んっっ」
思わず首を傾けてしまい、それが返って首筋を暴す形になってしまった。
チュッチュと首筋を吸うその暖かい唇が、あご、頬へと移動し、私の唇の上まで来た。
でもそれはキスとは違って、唇が触れるか触れないか、紙一重の距離で止まっている。
「今夜はめいっぱい甘やかして、俺だけの莉乃だって確認したかったんだけどな。
それなのに倒れるは、あいつらが押しかけてくるわ・・・」
話す度に揺れる唇が時々触れ合う。
その付かず離れずなふれ合いが返って秀吉さんを求めてしまい、その気持ちが乱れ始めた呼吸と共に漏れ出ていた。
「秀吉、さん・・・」
その一言で私の感情を汲み取ってくれたのだろう、
上唇と下唇を交互に食まれ、その境目を湿った舌が撫でてきた。
柔らかく攻められる感触に自然と口が開いてしまい、その隙間から舌が差し込まれる。
口内をうごめくその感覚に腰の奥が熱を持ち始め、反射的に足がきゅっと閉じた。
「莉乃・・・
もしこの先に進むのが嫌だったら今、言ってくれ。
今夜は劇にも出て、湯あたりもした。さらにあいつらとの飲みだ。
お前に無理はさせたくない。
それに俺も、これ以上進んだら途中で止められる気がしない」