第4章 梔子の嫉妬 ~後編~ 【徳川家康】R18
_____事が動いたのは、その晩のこと。
夕餉も終わり、自分の御殿の部屋で本を読んでいた。
その時、誰かが廊下を走る音が聞こえてくる。
「秀吉さんに見られたら怒られる」と思った瞬間、
顔を出したのは秀吉さんその本人だった。
血相を抱えて。
「家康!!すぐ莉乃の所へ行ってやってくれ!」
「どうしたんですか?」
「莉乃が倒れたんだ。今、部屋に運ばれたところで…
とっ、とにかく、早く行けっ!」
俺は羽織もはおらず、莉乃の部屋に急いだ。
駆けている途中、頭に浮かぶのはあのひだまりみたいな笑顔…
やっぱり、体調が悪いって言っていたのは本当だったんだ。
もっと早くに診察していれば…
無理にでも、こちらから押しかけていれば…
倒れる原因となる病気を頭の中で整理する。
疲れなど、簡単なものであれば良いが、もしも大病だったら?
後悔だけが黒い波のように押し寄せてくる。
城内の莉乃の部屋へ向けてとにかく走った。
「い、家康様!?いかがなされました!?」
廊下で三成とすれ違った気がするけど、どうでもいい。
「入るよ!!!」
返事も待たずに勢いよく障子を開けると、そこには…
信じられない莉乃の姿があった…