第4章 梔子の嫉妬 ~後編~ 【徳川家康】R18
(家康Side)
結局、診察の予定日に莉乃は御殿に来なかった。
『関係あるよ、ちょっとは、付け入らせてよ!』
この言葉ばかりが頭の中を駆け巡って、昨晩から何にも集中できない。
一体、どういう意味なんだろう。
もしかして、莉乃は俺のことを・・・?
そんなはずない。…期待、なんかしちゃだめだ。
浮かんでは消える莉乃の笑顔を打ち消すのに、相当の努力を要した。
___それから数日後の軍議
あれ以来、莉乃が軍議に参加する回数が格段に減った。
俺たちは軍議でしか顔を合わせなくなり、その時もほとんど目も合わず、会話もない。
前は頻繁にあった
「薬作り手伝おうか~?」
とひょっこり現れる笑顔を見たのがいつだったかのかも思い出せなくなっていた。
そして…
今日の軍議は欠席だった。
表向きの理由は「お針子の仕事が忙しい」だったけれど、軍議を差し置いて針子の仕事を優先したことは今まで一度もなかったから…
きっと嘘だと思う。
「莉乃様、今日もいらっしゃいませんでしたね」
三成は寂しそうだ。
見回せば、他の武将もなんだか覇気がない。
「家康、莉乃の診察はしたのか?」
信長様に問われる。
「いえ、それが…」
「まだなのか?」
「はい・・・」
「何をやっとるのだ貴様、早く診てやれ。
莉乃がおらんと、三成の茶を飲む羽目になる。
温(ぬる)うてかなわん。」
政宗さん、光秀さんがそれぞれ俺のことを見てきたけれど、視線は受け止めなかった。
三成は、また首をかしげていた。