第30章 御伽の国の姫~別館~【豊臣秀吉】R18
逞(たくま)しく男っぽい躯にときめきを感じてしまうが、見てはいけない・・・気がする。
そんな気持ちの狭間で視線がうろうろしてしまう自分に嫌気がさしてくる。
もっと堂々としていたいのに。
「お前なぁ・・・そんな目で見るな」
「そんな目って?全然何も見てないよ」
バレバレの嘘をついた。
「ったく、無自覚ってのが一番厄介だ。
ほら、来い。洗ってやる」
洗い場の椅子に腰掛けて待つ秀吉さんの元へ行くには、風呂から出なければならない。
この煌々と明かりが灯された風呂で、裸体を晒すのは恥ずかし過ぎる。
こんなことなら、この1ヶ月・・・
差し入れの団子を断っておくべきだった。
さらに、腹筋とスクワットも。
秀吉さんの無駄のない引き締まった躯の前に、どうして私が裸を晒せよう・・・
「さ、先に秀吉さん洗ってて、私はもう少し湯に浸かっていたいから」
「そうか、分かった。」
秀吉さんを凝視しないように視線を外しながら、そのまま風呂に浸かっていた。
洗い終わったらまた声をかけてくれるだろうが・・・
こんな数分の引き延ばしをしても意味がないことは分かっている。
うぅ、どうしよう、もうこれ以上風呂に浸かるなんて言えないし・・・
ふと秀吉さんを視界に捉えると、
あれ?
「秀吉さん・・・が、二人いる・・・?」
「何言ってんだ? 一人にきま、莉乃??
大丈夫か!?」
秀吉さんがぼんやりと二重に見えた後、視界がだんだんと狭まっていき・・・
暗闇の中に落ちた。
「莉乃!! 莉乃!!」という秀吉さんの心配する声を聞きながら。