第29章 御伽の国の姫~別館~【猿飛佐助】R18
「ちょっと~、なぁに」
佐助君の真剣な様子に思わず笑いが出てしまうも、まるでマネキンのように立たされた。
佐助 「あの脚本は莉乃さんが発案したんだって?
シンデレラを戦国版にアレンジするとは、よく思いついたね。
この時代で能や歌舞伎しか見たことのない皆さんは、とても驚かれていたよ。
俺も・・・シンデレラを見たのが学芸会以来だったから、懐かしかった。」
そう言いながら私の周りをぐるりと一周し、衣装を観察している。
佐助 「この髪型は?
隣にいた家康さんは『何あの髪、どうなってんの』って言ってた。
この時代はストレートの黒髪がデフォルトだからね。
あぁ、三つ編みを。なるほど、そうか・・・」
いつだって、何にだって真剣に調べを進める佐助君を見ていると、笑みがこぼれてしまう。
思わずそれが口をついて出てしまった。
「佐助君ってほんと可愛いよね」
おや心外だ、というだという表情を返してくる。
佐助 「可愛いのは、莉乃さんの方でしょ。
それに『可愛い』じゃなくて『格好いい』と思われたいんだけどな、歴史に名を刻む忍びとしては。」
「それはそれは優秀な忍さんに、失礼をしました」
歴史をなぞった冗談が言えるのも、佐助くんとならでは。
二人で笑い合う。
ふと佐助君の表情が真剣になり、まっすぐに見つめられた。
めがねの奥から見える澄んだ瞳に、一瞬言葉の出し方を忘れてしまう。
佐助 「現代の感覚は忘れていないと思っていたけれど、それでも、この世に深く馴染んでいるのも否めない。」
「どういうこと?」
佐助 「着物で肌を隠すのが当たり前になりすぎて・・・
この衣装を見たとき、変な感情が沸いてしまった。
政宗さんなんて、あの早着替えをした時、口笛吹いてたし。
信長様が羽織を掛けたとき、実はほっとした。」
佐助君が何を言おうとしてくれているのか、分かった。
益々可愛いと思ってしまったけれど、それは心の中に留め置く。
突如、ドレスの大きくあいた首元の襟を指でなぞられ、はっと息をのむ。
つい先ほどまで可愛いと思った佐助君の瞳の中に『男』を見つけてしまい、急に恥ずかしくなった私は目線を下に落とした。