第29章 御伽の国の姫~別館~【猿飛佐助】R18
宴の余韻を引き連れて自室に戻る。
部屋の鏡を見るといつもの『戦国時代の姫』ではなく、
元いた世・現代に近い顔をした私が見つめ返してきた。
これから会うのは、彼氏でもあり、唯一の現代仲間でもある佐助君。
『姫』でいる時は立ち振る舞いや話す内容にとても気をつけているけれど、佐助君の前なら自然な自分を出すことができる。
「こんなにぴったりした服、着たのはこの乱世に飛ばされてきて以来かも。」
もうこの先、このような格好をすることもないだろうと、宴の劇で着た衣装と髪型そのままに一人鏡と見つめ合いをしていた。
その時、障子の向こうから声がかかる。
「莉乃さん、いる?」
待ちわびていた彼の声だった。
駆け寄り、すぐに障子を開ける。
「どうぞ。」
佐助 「お邪魔します」
頭を下げて礼儀他正しく入ってくる佐助君。
佐助 「いつもこの部屋に来る時は天井からだから、廊下を通ってくるのが新鮮だった。
でも、少しばかり気になることがあったんだ・・・」
「どうしたの?」
佐助 「ここに来る途中、莉乃さんの部屋に行く方向を間違ってしまって。
どうも、天井裏を進む方が馴染むな。
で、ちょうど通りかかった三成さんに話しかけられたから、部屋への行き方を教えてもらったのはいいけれど・・・
この時間に女性の部屋にお邪魔するということは、そういう関係だと気づかれたかもしれない。
俺としたことが、早く会いたいばかりに配慮が欠けてしまった、ごめん。」
ぺこりと頭を下げてくる佐助君。
「三成君なら何も考えてないんじゃないかな。
それに私は・・・私たちの関係が公になってもかまわないよ。
むしろそうなればいいな、って思ってる。
でも・・・
『忍びにとって気を削ぐ存在があるのは足かせとなる』って謙信様が言うんでしょ?
関係がばれたら佐助君にとって面倒な事になりそうだから、ね。
仕方ないよね。」
佐助君の上司である謙信様は、それはそれは部下思いらしい。
部下思い、というか・・・佐助君に対して執着がすごいというか・・・
佐助 「そんなことより、もっと重要なことがある。
莉乃さん。
はい、ここに立って、よく見せて。」