第28章 御伽の国の姫~別館~【上杉謙信】R18
「あれは、お芝居の衣装です。
謙信様が心配するようなことは何も・・・」
謙信 「お前があのように男たちの目に触れるなど、俺には我慢がならない。
お前の柔い肌を見て良いのは、この俺だけだ」
そう言うと首元に噛むような強い口づけが落ちてくる。
ピリッとした痛みと、這わされた暖かい舌。
「ま、待ってください、謙信様!」
謙信 「お前が舞台に上がったのを見た瞬間から今まで・・・
ずっと耐え忍んできたのだ。
これ以上待たせるな。」
強引に扱われているのに、熱を帯びた謙信様の視線に胸が高まる。
「芝居とはいえ他の男と気持ちを交わすなど、到底許しがたい。」
重ねられた唇の隙間から舌が入れられる。
湿った暖かい舌が絡み、体の内側から熱が広がっていた。
呼吸まで奪われ、苦しさと与えられる愛の大きさ、求められる深さにくらくらする。
「け、んしん様、私は・・・
謙信様以外に、心も体も許す相手は誰一人おりません。
どんなに離れていても・・・この先もずっと、です」
熱のこもった視線を投げ返すと、謙信様の目が細くなった。
「莉乃・・・本当にそのように想っているのか。
お前が俺だけのものだという、証拠を見せろ。」
謙信様は伊勢姫との悲しい過去のせいで、愛情を信じられずに測ってしまうところがある。
それは私からの愛情だけでなく、佐助くんや信玄様など周囲の人からの友好もだった。
私は謙信様が過去の辛い思い出と決別するにはどうしたらよいのか、考えあぐねていた。
「証拠・・・ 分かりました。」
瞳に独占欲を灯した謙信様。
狂おしいほどの感情が、その左右で違う色をした瞳から発せられている。
こんなにも強く求められ、独り占めしたいと思ってくださる愛に応えるには、上辺面の言葉を重ねても伝えきれない。
余すことなく気持ちを伝えたい・・・
私は謙信様からそっと離れると、部屋にいくつか灯っている灯籠を消し、闇を作った。
障子を通してうっすらと差し込む月の光だけが、私たちを浮かび上がらせる。