第27章 御伽の国の姫 後編
光秀 「お前のその些細な脳で、よくあの台詞を覚えられたな。
手にでも書いていたのか?見せてみろ」
家康 「光秀さん、どさくさ紛れに莉乃の手を触ろうとしてますよね。まったく…
莉乃、城下にあんみつ食べに行きたいなら…
付き合ってやってもいいよ」
「え?あぁ!あれはお芝居だよ、家康ったら影響されてるし。
でもありがとね。」
家康の仏頂面に似合わないお誘いがおかしくて、
思わず笑顔がこぼれる。
三成 「莉乃様、劇が始まる前にお預かりした言付けを申し伝えたのですが…
皆様、演出にかなり影響されてしまわれて…
莉乃様の演技の妨げになったのではないかと心配でした。」
「あ、あぁ、うん。
舞台からかなり見えていたけれど、大丈夫。
なだめ役をやってくれてありがとう。」
信長 「莉乃これを」
そう言って、信長様が着ていた羽織をさっと肩にかけてきた。
羽織から暖かな温もりがうつる。
舞台で着ていたぼろ着物を脱ぎ、イブニングドレス姿でいたのを忘れていた。
体の線にそって作られたそのドレスは胸もお尻の形も丸わかりで、襟ぐりも大きく空いており、寄せ上げた胸の谷間が見えている。
私の元いた時代では特に誰も気にもとめない、むしろドレスとしては地味目な作りだけれど、今の着物に慣れ親しんだ人には刺激的だったに違いない。
「ありがとうございます」
信長 「貴様のそのような姿を……まぁ着ておけ。」
政宗 「あーあ、隠されちまった。」
政宗はああ言うけれど。
武将たちが皆、話す時に私の上方に視線を漂わせていたのはそういうことか。
なるべく見ないようにしてくれていたらしい。
愛すべき武将たちは皆、紳士だから。