第27章 御伽の国の姫 後編
城の中庭で行われた宴は、余興の終わりとともに立食パーティに変わった。。
この時代の宴といえば広間で行い、食べ物は個別で膳に出されるのが一般的。
外で行われるのは、園遊会や競技会などの公式行事だった。
このように立食で、武将・大名・商人が入交り、階級や職業を超えて、さらに国籍も超えて交流するなど初めての試みだった。
まさに、信長様が成そうとしている『泰平の世』の縮図のよう。
葡萄酒はもちろん、気前の良い信長様からも全国から選び抜かれた一級品のお酒の提供がされた。
一口でつまめるオードブルや、美しく盛られた果物。
この時期に日本に入ってきたカステラも振舞われ、皆が舌鼓を打つ。
政宗は料理人を捕まえてはあれこれ質問していた。
春日山城の皆さんも__特に義元さんが、南蛮の商人たちとの交流に花を咲かせていた。
珍しい輸入品や絵画のことなど、知識のある義元さんに商人たちも驚いた様子。
越後でもこのような催しを開催する約束まで取り付けていた。
佐助くんはずっと家康についてまわり…
そしてその中に三成くんも加わり…
家康 「なんで似たようなのばっかり寄ってくるんだよ…」
秀吉 「こーら、家康。 宴の席で怒らない」
とこれまたいつもの流れになっていた。
信長様、謙信様、信玄様は商人から次々と出されるワインを試飲していて、深みが、酸味が、とお酒談義に夢中になっている。
それに気づいた佐助くん。
佐助 「莉乃さん、もう俺、これを見れただけでも感動のあまり成仏しそうだ」
そう言って、無表情のまま手と手を合わせていた。
幸村 「ほら、食え。
お前ずっとなんも食ってなかったろ。」
そう言って幸村は楊枝に指した果物を口に運んでくれる。
皆が楽しそうで、私も幸せだった。
夜も更け…
宴がお開きの時間となる。
皆が満足そうな顔と酔った体を支え合いながら、中庭から出て行き始めた。
武将たちはそれぞれの御殿へ、
そして春日山城のみなさんは、城内にあるお客様専用の部屋、現代で言うところの「貴賓室」に各自滞在していただく事になっていた。
私も、自室に戻る。
彼の耳元で『あとで』とささやいて。
__御伽の国の姫 後編 完__