第27章 御伽の国の姫 後編
(家康 「なにあの妖術。胡散臭い」
(三成 「ですから……」)
(秀吉 「俺、もう汗だく。心ノ臓がバクバクしてるぞ。」)
(政宗 「俺も」)
大名 「捕まえたばかりの貴方を置いて、一人先に逝くわけにはいきません。
これからも共に過ごしましょう、姫。」
「はい」
こうして二人は抱き合い…
口付けを交わす。
実際には、そのシーンは観客から見えないようにさっと広げた扇で隠し、口付けをしたように見せかけただけだったけれども。
キスシーンに再び、観客席から拍手が起こる。
先程よりももっと大きな。
(謙信 「大名め、あのまま死ねば良かったものを…」)
(信長 「やはりそういう魂胆だったか。卑しい奴だ」)
「こうしてあっという間に刺し傷が治った大名とシンデレラは、お城で仲睦まじく暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。」
そう言って、大名とともに舞台の上から頭を下げる。
私たちのその後ろにはこの劇に関わった全ての演者と関係者が立ち、同じように頭を下げていた。
舞台正面に幕が下ろされた。
演者たちと手を取り合って劇の成功を喜び合う。
商人 「莉乃様ーー大成功です!!
これもみな、莉乃様が力を尽くしてくださったおかげ…
本当にありがとうございます!」
私の手を両手で握りながら、感動で涙目になっている。
「いえいえ、みんなで作り上げたものですよ。
楽しかったですね!成功して良かった!!
参加させていただきありがとうございました!」
そう言って演者、黒子の皆さんに向かって頭を下げると、拍手が起こった。
感極まって泣く者、抱き合って成功を喜ぶ者。
それぞれが皆、満足の顔をしていた。
私は特別席でお酒を飲まれている皆さんの所へ駆けていった。
実はその輪の中には…
今日の劇の感想を1番に聞きたかった、彼もいる。
宴が終わったら、二人きりで過ごそうと約束していた。
もう少し皆でいる宴の時間を楽しんで、その後は…
彼だけの姫になる。
私の気持ちはすでに高まり始めていた。