第27章 御伽の国の姫 後編
「大名様、私もあなたのことをもっと知りたい…」
見つめ合う二人。
自然と顔が近づいて…
(秀吉 「なっ!!!!!」)
(家康 「ちょっと莉乃!!」)
(三成 「見ません…見ません…」)
(幸村 「待てこら!」)
いよいよ唇が触れ合う、直前。
家臣の一人が宴の終了を告げにくる。
はっとして顔が遠くなる二人。
(信玄 「体に悪いな…この劇というものは。」)
(義元 「無粋な家臣だねぇ」)
「もうそんな時刻に!? 私、帰らなくては…
ごめんなさいっ!」
そう言って駆け出した。
大名「お、お待ちください! 姫――っ!!」
舞台を走り袖へと向かう途中、草履の鼻緒が切れて脱げてしまう。
それでも駆けていく莉乃。
舞台に残された古びた草履を大事そうに抱え、大名も舞台からはけた。
舞台は再び、黒子によって最初のシーンの演出へと戻る。
そこには、またボロボロの着物を着た莉乃と、姉たち、継母がいた。
草履が脱げて置いてきてしまった設定のため、裸足だった。
そして汚れた演出のため、顔に煤(すす)を少し塗っていた。
継母 「まったくバカな子だよ。
一足しかない草履を無くしてしまうなんてね。」
義姉1 「ほんと。もうずっと裸足でいればいいじゃない。
そもそもあんたが草履を履くなんて、生意気よ。」
義姉2 「お母様、新しい草履を買ってくださいな。
20足じゃ足りなくって…」
継母 「ああそうだね。
年頃の娘だもの、新しい着物もあつらえなければね」
私はしょんぼりとした顔をして下を向く。
(秀吉 「あぁ、もうだめだ。
俺が着物と草履買ってやる!草履、暖めてやる!」)
(三成 「秀吉様…落ち着かれて下さい、お芝居ですからね。」)
そこへ、大名とその家臣が訪ねてきた。