第27章 御伽の国の姫 後編
バイオリンとオルガンが軽快な音楽を奏で始める。
大名から腰に手を回され、体を添わせた莉乃が舞台の上で廻り動くダンスを始めた。
同じように演者たちも男女ペアになり廻りはじめ、そこはダンスパーティのような様だった。
__会場からはこの西洋の音楽と男女の舞に、感嘆の声が上がっている。
(三成 「演技といっても、あそこまで体を密着する必要があるのでしょうか…」)
(信玄 「天女の舞は美しいが…
これはいただけないな」)
(光秀 「西洋の舞と称すればこのように密着する理屈になるのだな、覚えておこう」)
(信長 「………………………殺す」)
(謙信 「………………………斬る」)
(義元 「美しいね」)
優雅に1曲を踊り終えた莉乃と大名は親しげに手をつなぎながら、重要な『愛を深めるシーン』へと入っていく。
他の演者たちが舞台袖へといなくなり、またも黒子による大道具の入れ替えで、天主の欄干のような…
バルコニーのような舞台演出へと様変わりした。
大名 「やっと二人きりなれましたね。
実は…貴方にお話したいことがあります。」
「はい、何でしょうか?」
大名 「私の父は病に伏せており、もう長くはないでしょう…
そのため、本来でしたらこの宴までに正室を決め、家督を継がなければなりませんでした。
そうできなければ、父が決めた嫁を娶らねばなりません。
しかし、貴方に出会い…
私はもっとあなたと同じ時を過ごしたい、もっと深くまであなたを知りたい、そう感じています。
あなたが、どこの誰でも私は構いません。
私の元へ来ていただけませんか?」
そう言って、片膝をつき莉乃の手にキスをした。
___会場からは、女性陣の憧れに似た甘いため息が聞こえる。
武将たちは莉乃の状況に苛つきながらも、大名の置かれた立場も分からなくもないため…
複雑な気持ちでその様子を見ていた。