第27章 御伽の国の姫 後編
舞台の演出道具が黒子により一斉に取り替えられ、
即席の宴の場が作られた。
舞台上には宴の招待客に扮した演者が大人数あがり、継母や姉たちも混ざっている。
その中には、一際目立つ長身の若い男性の姿があった。
それは王子にあたる大名の役。
この役の方はスペインから来ている商人で、彼らの中で一番のイケメンだということでプリンスならぬ大名役に抜擢されたらしい。
もちろん舞台練習では何度もご一緒してはいたけれど、正装した姿はかなりの美青年。
案の定、会場の女性たちからは熱い視線が飛ばされていた。
場面転換が終わり、籠で宴に到着した場から劇が再開される。
「わぁ、ここが大名様のお城なのね!大きくて素敵!
早速、宴の広間に行きましょう!」
そう言って、舞台の上の大人数の中に入って行く私。
シンデレラの美しさに周りの人々は息を飲んで静まり、その異様な雰囲気を感じた大名がシンデレラの存在に気づく、という出会いのシーンだった。
大名が舞台正面に出てくると、女性の観客たちから黄色い声が上がる。
(政宗 「あいつが莉乃の相手役か。気に入らねぇ」)
(秀吉 「まぁまぁ、落ち着け」)
大名 「おお!なんと麗しい!!
あなたのような美しい方を見たことがありません。
お名前は?どこの国の姫様ですか?」
「…いえ、名乗る程の者ではありません。」
そう言って恥ずかしそうに顔を逸らし、
目をふせる演技をする。
(信長 「織田家ゆかりの姫だろう。隠すな」)
(謙信 「ふっ、笑わせてくれる。
今夜から莉乃は上杉家の姫となるがな。
いや、姫ではない…妻か。 くっっ…」)
(佐助 「ご自分で言っておいて照れないでください、謙信様…」)
(信長 「ゆめゆめ勘違いするな、莉乃は__」)
(三成 「お静かに願います、見逃しますよ。」)
大名 「名も無き姫、ですか…
益々興味をそそれられる。
姫、どうか私と1曲、踊ってはいただけませんか?」
そう言って莉乃の手を取る。
(家康 「チッ」)
(佐助 「…家康さんのナマ舌打ち、ゲット」)
(幸村 「佐助… お前、もしかして…」)