第26章 御伽の国の姫 前編
ここは変身の見せ場だった。
ぼろ着物の下に薄手のイブニングドレスを着込んでおり、帯を手早く外して着物を落とすとドレス姿に変身できる仕掛けにしておいたのだ。
そしてまとめていた髪は、実は前日より三つ編みをいくつも作り、ウェーブになるように作りこんでいた。
この場面までそれが分からないように、三角巾で隠していた。
三角巾と髪をまとめていた紐を一気に外すと、この時代の日ノ本にはないパーマをかけたような髪型になる。
ゆるいウェーブがかかる髪に、物の怪がティアラを取り出し乗せてくれる。
と同時にさっと口紅も塗ってもらった。
ティアラは厚紙で型どりしたものに砕いたガラスを貼り付けたもので、行灯の光をうけてキラキラと輝き、あっという間に西洋の姫が出来上がった。
会場から「おぉ~」という声があちらこちらで上がる。
武将たちも、見たことのない衣装への早着替えに驚いた顔をしていた。
(信長 「あれが猪か昆布に見えるか、幸村」)
(幸村 「うっせーよ」)
(信玄 「あぁ、麗しの天女。今すぐ抱きしめたい」)
(謙信 「佐助、莉乃を春日山城に連れ帰る。
俺の自室に住まわせるから準備しろ」)
(政宗 「なんだあの西洋の着物は。
体の線、丸出しじゃねーか。あいつ俺のこと誘ってんのか?」
(家康 「絶対違うと思いますよ、政宗さん」)
(光秀 「ほう、これはなかなかだな」)
(義元 「きれいだねぇ、あの素材は何からできてるんだろうね?」)
「物の怪さん、ありがとう!これで宴に行けます!」
物の怪 「一つ、気をつけておくれ。
私の妖術は宴が終わる頃には切れてしまう。
それまでに帰ってくるのだよ」
「はい、わかりました!」
嬉しそうに籠に乗り込み、物の怪と会場に向かって手を振る。
三成くんが「莉乃様、いってらっしゃいませ!」と手を振ってくれていた。