第26章 御伽の国の姫 前編
義母 「しっかりやっておくんだよ!
ぬかったらただじゃおかないからね!!
折檻(せっかん)されたくなきゃちゃんとやんな!」
そう言って舞台からはけた。
ぼろ雑巾を握り締めながら、今にも泣きそうな顔を作ってみせる。
悲しいバイオリンの旋律が会場内をしんみりとさせた。
床に撒かれた水をぼろ雑巾で拭き取りながら、次のセリフに入る。
「毎日毎日、掃除に洗濯、みんなの食事を作って…
城下に遊びに行くことさえ許されず、私の食事は1日に一度だけ。
着物はこの粗末な1着のみ…
この草履の鼻緒はもう切れそう。
なぜいつも私だけこんな目に…?
私だってきれいな服を着て、宴に行ってみたい…
城下であんみつを食べてみたい…」
(あ、秀吉さんと幸村、涙目になってる…
信玄様、手握りすぎて白くなってるし…
信長様は完全に表情なくなってる…
謙信様!刀の柄に手がかかってる!!なぜ!?
三成くんー頼むーー)
その時、裾の長いドレスを着た妖艶な女性が舞台へ現れた。
「泣くのはおよし、シンデレラ」
「あなたはだあれ?」
「私は妖術使いの物の怪だよ。
お前がいつも我慢して頑張っているのを見ていた。
だから今日はご褒美に、宴へ行かせてあげよう。」
(幸村 「あいつ怪しくね?物の怪だって自分から名乗ったぞ。」)
(佐助 「いや、大丈夫じゃないかな。良いたぐいの物の怪だろう」)
(義元 「へー、どんな妖術か楽しみだね」)
「でも、私のこのなりじゃ…
それにお城までは距離もありますし…」
物の怪「まぁ見ていてごらん」
そうすると、台所のセットからかぼちゃを持ち出す物の怪。
物の怪「ちちんぷいぷいちちんぷいぷい、籠(かご)を呼~べ!えい!!」
舞台袖から籠が運ばれてくる。
物の怪 「これで城までは行けるね」
(政宗 「南瓜は関係ないだろ?」)
(佐助 「ここはちょっと…演出の難易度的に致し方ないか」)
「まぁ素敵!! でも、この着物…髪も…」
物の怪 「私の妖術はこんなものじゃないよ。
ちちんぷいぷい、変身し~ろ!えい!!」