第26章 御伽の国の姫 前編
それから毎日、準備や稽古で忙しくする日々が続き、あっという間に当日を迎えた。
一緒に劇に出る皆さんも舞台袖でその時を待つ。
「頑張りましょうね」と手を握り合いながら。
監督の声がかかり、いよいよ、開演だ!
___その頃、特別席にいる武将たちに、三成くんが声をかけていた。
「皆様、これより余興の劇が始まります。
その前に、莉乃様より皆さまへ言付けをお預かりしております。
『これから始まる劇は西洋のもので日本の文化とは違う部分がありますが、驚かないでくださいね。
あと、あくまでも劇です。
演技ですから、安心してご覧下さい』
以上です。」
三成はぺこりと頭を下げて自席に戻る。
佐助 「莉乃さんが劇に出るのも楽しみですが、こうして家康さんの隣に座れるなんて夢のようです。
自伝持ってるんですよ、俺。バイブルでした。」
家康 「ちょっと何言ってるか分かんない。
始まるから黙って。」
信玄 「俺の天女が出演するなら…
やはり天女の役かな。楽しみだ。
劇が終わり次第、すぐに抱きしめに行こう」
謙信 「この場で手足を切り落としてやろうか、信玄」
幸村 「はぁ~、二人共やめてくださいよ。
信玄さま、どうせあいつはイノシシか昆布の役ですって。ぷっっ」
信長 「幸村、貴様。
俺の莉乃を野獣や海藻扱いするなど良い度胸じゃないか。
この場で斬り捨ててやるわ。」
義元 「芸術の場でそんな物騒なこと言わないの。
あ、みんな静かに。始まるみたいだよ。」
開演を告げる声とともに、静かなバイオリンの演奏が始まった。