第26章 御伽の国の姫 前編
むしろ準備で一番大変だったのは…
信長様や武将の皆に内容がばれないようにすること。
宴の計画、そして私が劇に出ること。
さらに道具や衣装が私の部屋にあることを知った武将たちは、何かと理由をつけては代わる代わる私の部屋にやってくるようになっていた。
だけれども、私は決して誰も部屋に入れなかった。
秀吉 「莉乃~、団子持ってきたぞ」
「ありがとう!ここでいただくね」
そう言って障子を少し開けただけで受け取ろうとするも…
隙間から準備している小道具や衣装をチラ見しようとしてくるのだ。
「秀吉さん…いい加減にして。
当日までのお楽しみだって言ったでしょう?」
秀吉 「いや、俺は何も見てないぞ。
なぁ、政宗」
政宗 「おいこら、お前が話してる隙に俺がこっそり見るって作戦だったろ。
呼びかけるな、ばれたじゃねーか。
こういうのは光秀と組まなきゃだめだな」
家康 「二人共、何やってるんですか。
また偵察に来たんですか?」
次は家康の声もする。
政宗 「呆れた顔してるお前は何しに来たんだよ。
っていうかお前が手にしてるその団子は何だ。」
家康 「いや、これは… 莉乃が…
莉乃を…… 莉乃に……」
秀吉 「家康、落ち着いてはっきり話せ、はっきり。」
私は盛大にため息をついて見せた。
「みなさん、『当日に』お見せします。
それまではここには立ち入り厳禁です。
分かりましたね?
お団子、ありがとうございました。」
そう言って満面の笑みでニコっとするとパシっと障子を閉めた。
直前に家康の団子も受け取って。
障子の向こうから、
「信長様にまたどやされる…」
という秀吉さんの声が小さく聞こえた。