第26章 御伽の国の姫 前編
『信長様に秘密』など目の前で言われたことのない信長様は、逆にとてもワクワクした様子で「そうか」と頷いていた。
秘密を暴く事を生業としている光秀さんは、若干目が厳しくなったけれど…
「きっと皆様が見たこともないような宴にしますね」という商人の方の言葉とキラキラした目に納得したようだった。
謁見が終わり、私と宴の担当の方々との会議が始まった。
聞けば、余興の内容は楽団の演奏に、歌。
その後、メインの出し物である劇をお見せしたく、私をその劇に『姫』として出演させたいそう。
担当の方々の中で『姫が姫を演じるのは楽しそうだ』というアイデアが出たらしい。
それで、謁見の場にいた私に白羽の矢が立ったのだ。
商人 「内緒だと申しましたが、実は…
『姫が姫を演じる』しか決まっておらず、脚本の準備が出来ていないのです…」
とても不安そうに商人の方々が肩を落としている。
うーん、南蛮風のお話で、姫が出る劇の台本かぁ…
現代にいた頃の記憶を漁る…
必ず『姫』が登場するディズニーのお話をいくつか挙げてみた。
すると、その中で皆さんがこれは!と興味を持ったのが『シンデレラ』のお話だった。
私が話した内容がその場で脚本に起こされ、
早速、配役や舞台の相談が始まる。
商人 「流石は莉乃様。
お美しいだけでなく脚本の才まであるとは…
恐れ入りました」
皆さんが頭を下げてくる。
「いえいえ、ウォルトさんの案なんです」
きょとんとした顔をされるも、その場は劇の事で皆頭がいっぱいになった。
私はただ出演するだけだった予定が、相談されているうちに、小道具や衣装を作る手伝いまでやっていた。
南蛮の方が毎日やってきて相談しながら作ったり、
針子の仲間も手伝ってくれていた。
西洋の衣装作りは、針子にとっても勉強になるものだから一石二鳥。
まるで文化祭の実行委員になったみたいで、とても楽しくやりがいがあった。
そしてみるみるうちに、小道具や吊るされた衣装などで私の部屋がいっぱいになっていった。