第24章 悠久と玉響 【明智光秀】
お互いの間を、今までにはなかった感情が行き来する。
中身を知っているのに勿体無くて開けられない贈り物のような、そんな甘い気持ちが。
いつもは口が立つ光秀だがこの時ばかりは何の相槌も打たずに、莉乃が気持ちを吐き出すのをただ待っていた。
___自分を求めるような言葉がもっと出るのではないかと。
「昨日船の上で私が聞こえなかった台詞って何だったんですか?」
光秀 「あぁ、あれか… 忘れた。
だがな…今言いたいことが見つかった。」
首をかしげる莉乃に近づき、腕の中に閉じ込める。
光秀 「逢瀬に合わせて雰囲気を変えたお前を見た時。
秀吉の馬に乗り、体を寄せるお前を見た時。
砂に足を取られ秀吉に支えられ、手を取られたのを見た時。
抱いたことのない感情が湧いた。
俺はお前を…気に入っているのかもしれんな。
昨日の秀吉に対して嫉妬心が沸くほどには。」
目を丸くし、口をぽかんと開け、瞬きを繰り返す莉乃が愛らしすぎて、思わず吹き出してしまう光秀。
光秀 「お前は何かの小動物か」
そう言って、おでこに口付けを落とす。
肩をびくりと震わせた莉乃。
「み、光秀さん、、、からかってますか?」
光秀 「いや。本心だ。で、お前はどうなんだ。」
「わ、私も…光秀さんを好いているかもしれません。」
光秀 「そうか、お互い好いている『かも』か。
では、その先があるか確かめてみよう」
光秀はそう言うと首を倒し、莉乃に口付けをした。
ほんの軽く触れるような、柔らかい唇が合わさるだけの。
たったその2秒足らずの口づけがもたらす効果は絶大だった。
莉乃の口から、小さく吐息が漏れる。
光秀 「うん、悪くないな」
そう言うと今度は先程よりも長く唇を合わせ、さらに莉乃の下唇を喰む。
光秀の薄い唇で喰まれた莉乃の目は潤み始め、唇が離れた瞬間、息が乱れ始めた。
光秀 「口付け一つでなんていう顔をするんだ、バカ娘。」