第24章 悠久と玉響 【明智光秀】
秀吉 「な!なんだ、いたのか莉乃!!
まぁ、あれだ。 あとは…二人で話せ」
そう言うとそそくさとその場を去ってしまう秀吉。
莉乃には気まずさがあったが光秀は顔色一つ変えず、いつもの笑顔だった。
光秀 「立ち聞きをするならもっと身を隠せ。」
「たっ、立ち聞きなんてしていません!!
本当に忘れ物があって。でも何かお話中だったので…」
光秀 「ならばさっさと入ってくれば良かったろう。
中に入るのをためらうような話はしてなかったぞ、俺たちは。」
「え…そうなんですか?」
光秀 「お前は本当に…くっ、分かりやすい娘だ。
全部顔に書いてある。」
そう言うと笑いながらおでこをピンと弾いた。
光秀 「秀吉のお人好しは相変わらずだな。
俺が莉乃に惚れているそうだ」
何か面白い冗談を話していたかのように、光秀は軽く告げる。
そうすれば自分の感情も軽くできるかと言うように。
「・・・・そうだったらいいのに。」
光秀 「は?」
「私は昨日… 自分で自分が嫌になりました……」
光秀 「何の話だ?」
「光秀さんの涼子さんへの態度がすごく冷たく見えました。
私だったら、あんな風にされたら嫌だな、って。
だから最初は光秀さんに腹が立っていました。
でも、私への態度はいつも通りで、なぜかちょっと安心した自分がいたんです……
最低ですよね。」
語尾はほとんど聞き取れないほど小さくなってしまったが、莉乃の言いたいことは伝わったようだった。
「莉乃…」
「あと、この先に進む気がないと聞いた時も、帰りに馬に載せてもらった時も…なんだか安心でした。
うまく説明ができないんですけど…」
莉乃は顔が赤くなっていた。
先程つけた感情の名前が「嫉妬」だとしたら、今、目の前にいる莉乃の感情は・・・
恋、だろうか。
光秀はこの気持ちが泡立つ感覚にしばし身を委ねていた。