第3章 梔子の嫉妬 ~前編~ 【徳川家康】
____数日後の軍議
「___以上だ。 各自、職務に励め」
信長様の号令で軍議が終わる。
いつものように参加していた莉乃はどこか上の空で元気がなかった。
それは周りの武将たちも気づいていたらしく、
「莉乃どうした? 最近元気がないぞ?」
気遣い隊長の秀吉さんが声をかける。
「ちゃんと食ってるのか?」
政宗さんも続く。
「月のものではないのか?」
……光秀さんはいつもこうだ。
光秀さんのからかいにチラっと目を向けただけで、莉乃は
「お先に失礼します」
と出て行ってしまった。
「莉乃様・・・」
三成までしょんぼりとした顔をして…
___静かな広間…
いつもは誰かがからかうと負けじと返してくる莉乃に元気がないと、武将たちも影響される。
いつのまにか莉乃は織田軍の武将たちにとって明かりを灯すような存在になっていた。
なんだかんだ、みんな莉乃の事を気に入ってるからな…
胸がチクリとする。
___俺は…
あの子が500年前から突然現れ織田軍の一員となった時から…
思ったことがすぐ瞳にも発言にも現れてしまうバカ正直なところ、
曲がったことが大嫌いで正義感が強いところ、
それなのに、褒められると目を伏せて恥ずかしがるところ…
俺には到底できないことを軽々と超えていくあの子の強さが、正直、羨ましかった。
あの子には身分も立場も関係ない。
自分が良かれと思ったことに真っ直ぐに向かってゆく。
自分が天邪鬼だってことはよくわかってる。
育ってきた環境がそうさせたのか、天性のものなのかは分からないけど。
莉乃には自分にない部分が多すぎて、余計に惹かれてしまうのかもしれない。