第23章 平静と刺衝 【石田三成】R18
「いや、どこも悪くない。ただ、あいつは…
莉乃の事が好きすぎて、自制できなくなってる。
それを悩んでて… 俺が気持ちを落ち着かせる薬、処方した。」
「そ、そうなんだ……」
頭の中で状況と薬の関係が合致したのだろう。
ぽつりぽつりと三成の様子を話し始めた莉乃。
「ごめん、薬が効きすぎたんだと思う」
「家康が謝ることじゃないよ」
逆に熱が抑えられてしまった三成は反応することができず、そのことで異変を感じこの場を立ち去ってしまったのだ。
冷静に話すうちに、莉乃の涙が止まった。
涙が止まったとは言え、まだ水分の残る潤んだ瞳で何かを考える莉乃はとてつもなく魅力的だった。
日中、三成から聞いた内容が頭の中で反芻する。
…自分だったら莉乃にこんな涙は流させない。
自覚していなかった、いや、分かっていたのにその感情に蓋をしてきた気持ちが溢れはじめていた。
気が付けば莉乃を腕の中に閉じ込めていた。
自制できないのは俺も、か。
「ちょ、っと、家康!?」
「なんで…三成なんだよ」
「えっ!?」
「三成なんてやめて、俺にしなよ…」
「家康…ごめんなさい。」
その声色に、その一言に全ての想いが集約されていた。
抱いていた腕を解く。
「俺も…ごめん。」
そう言って、莉乃の部屋から逃げるように出てしまう。
「くそっ…」
抱きしめたあの一瞬で莉乃の柔らかさと暖かさと、香りを知ってしまった俺は、もう引き返せない感情の行き先のなさに苦しさを感じていた。
そして…
この先、三成とのことを祝福できないであろう己の弱さを思い知らされ、思わず悪態をついていた。