第23章 平静と刺衝 【石田三成】R18
______ちょうどその頃、安土城中庭。
莉乃は一人、中庭で信長の部屋に活けるための花を剪定していた。
「気をつけろ、その花にはトゲがある」
「いたっ」
背後から落ち着いた声がした瞬間、その刺を触ってしまい少し出血してしまった莉乃。
「だから言ったろう、ほら見せてみろ」
そう言うとその低い声の持ち主である光秀が莉乃の手を取り、指先から出ている血を懐から出した懐紙で押さえた。
「す、すみません…」
「いつにも増して気の抜けた顔をしているな」
そういって顔を覗き込んでくる。
切れ長の目に全てを見透かされてしまうような気がして、莉乃はとっさに一歩下がり間合いを取ろうとしたが、掴まれている指のせいでそれは上手くいかなかった。
「三成と喧嘩でもしたか」
「…喧嘩になれれば良いんですけどね。」
そうポツリと呟く莉乃はとても寂しげで、思わず抱きしめてやりたい気持ちが湧き上がる。
莉乃にこのような顔をさせるとは。
理由は分からないが、光秀は三成に対して無性に腹立たしい思いをしていた。
押さえていた懐紙を外すと、もう血は止まっていた。
傷口に軽い口付けを落とす。
「光秀さん!?」
顔を赤くして目を丸くする莉乃に
「早く治る…まじないだ」
そう言って光秀はその場を後にした。
___治してやりたいのは、指の傷だけではなかったが。