第2章 真紅の彼方 ~後編~ 【織田信長】R18
髪を優しく梳かれる。
その感覚に目を開けると、隣には私の髪を弄びながら満ちた表情の信長様が隣に横たわっていた。
「鎮圧から帰ってきたばかりなのに、無理をさせてしまいました。」
私がかすれた声で言うと
「半年がかりとは…
どの戦より、一揆制圧より…貴様を攻め落とす方が骨が折れたわ」
ふっと笑う。
私は背中を優しくさすられながら、褥の横にある脱がされた夜着に目をやった。
「早速着てくださいましたね」
「当たり前だろう。
初めて貴様が俺のために作ったものだ。
天主に戻ってきてこれがかかってるのを見たときは・・・」
「見たときは・・・?」
「まぁ、良い。
貴様で暖を取れた。」
背中をなでる手にきゅっと力が入り、抱きしめられる。
しばらく、裸で抱き合う心地よさに身を置いた。
今お互いの間にあるのは、安心と、居場所を与え合うぬくもりだった。
「莉乃よ。」
「はい?」
「500年後に帰りたいか?」
そう尋ねる信長様の目は、優しさの中に不安が混じっていた。
「・・・はい、帰りたいです。」
「そうか・・・・・・」
「・・・・・・でも、それ以上に、私はここで生きていきたいと思っています。
着物作り楽しいですから。
また、注文していただけますか?」
そう笑顔で言うと信長様は笑って、
「承知した」
そういって私の額に優しい口づけを落とした。
真紅の目がきらりと光る。
「先程は・・・急ぎすぎた。
貴様をもっと味わう事にする。さらに落ちるところを見せろ」
そう言ってあちこちにキスしながら再び私を組み敷く。
その顔にあるのは、魔王の悪戯っぽい微笑みだった。
信長様の肩ごしに、太陽が昇り始めたのを感じる。
だんだんと白む天主に、私の声なき声が再び響き始めた。