第21章 猛将の憂鬱 ~後編~
「莉乃、ひとつ、頼みがあるのだが」
今日は信長様におかしなことがたくさん起きている。
部屋に来て、布団を敷き、寝かしつけ、謝られた上に、頼みがある、とは・・・
衝撃を受けたことを悟られないように、いつもの声色を頑張って出して答える。
「なんでしょうか?」
「武将達のことも、許してやってくれ。
莉乃があのような態度では・・・士気が落ちて軍議ですらままならん。」
「私も・・・申し訳ないと思っていました。
皆さんにも嫌な想いをさせてしまって・・・」
「しかし貴様は・・・とんだ悪女だな。
着物と化粧一つでここまで男を狂わせるとは。
貴様があの姿で軍議の間に入ってきた時のあやつらの顔と言ったら・・・」
思い出して笑っている信長様。
「なんですか、それ。
私は何を着ても、どんな化粧をしても中身は変わりませんよ。
信長様のことが大好きですから・・・」
そう言ってはにかむと、信長様が片眉を上げる。
「ほう。 本当に中身が変わらぬか、確かめてやろう」
何を着ても、と言ったのにもかかわらず、着ていたものを全て剥がされ・・・
私のとても奥深くまで、信長様に確認されてしまった。
もうこれ以上ないというほどに信長様に暴かれてしまった私は、同じように・・・
信長様の深いところもまた・・・暴いてしまった。
お互いをさらけ出した今、私たちの間にあるものは戻った信頼と、大きさの増した愛情だった。
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「そろそろ支度をせねば。軍議だ。」
信長様の腕枕でうとうとしていた私は、その声で我に返る。
「もうそんな時間ですか」
「今日は貴様も来い。茶出しだけじゃなく。
あやつらに、その不抜けた笑顔を拝ませてやるが良い。」
「不抜けた、って・・・
こうさせたのは信長様ですよ」
恥ずかしさを隠すように、口を尖らせて見せる。
「莉乃・・・」
「はい?」
突然真面目な顔になった信長様。