第21章 猛将の憂鬱 ~後編~
「このまま・・・ここにいろ」
回される腕に力がこもり、体が密着する。
信長様の心臓の音が胸から移り、一緒に時を刻んでいるようだった。
当たり前の質問をぶつけてみる。
「なぜここにいらっしゃるのですか?」
「貴様と話すために来たが・・・寝ておったので運んだ」
「布団はどなたが用意を?」
「俺だ。」
「・・・信長様がここに来て、布団を敷いてくれた、、、
あ、ありがとうございます・・・」
「大事ない。」
理解が追いつかない。
第六天魔王と呼ばれるような信長様が自らやってきて、布団を敷き、寝かしつけてくれるなど・・・
「話に来た、とは・・・ご用事は何だったんですか?」
平常を装い話しながらも、少しずつ体の距離を取ろうとする。
いくら会いに来て布団を敷いてくれたところで、信長様の考えていることは分からない。
お互いが、この数日のことを帳消しにできるとは思っていなかった。
「用事がなければ、『かのじょ』に会いに来てはならんのか
・・・おい貴様、離れていくな。 ここにいろと言ったろう」
少しの隙間が出来始めたお互いの距離を、また詰められてしまった。
信長様の口から『かのじょ』と出るとこそばゆくなってしまう。
「用事がある、と言えばある・・・
疑って・・・・・・すまなかった」
「今・・・なんて?」
「二度は言わん」
明らかにバツが悪そうにそう言って目をそらしてしまった信長様。
この言葉を伝えようとしに来てくれたのだろう。
冷たくなっていた心が溶けていくような…
じんわりとした暖かさが胸に広がった。
この言葉を聞けたから・・・
もう、大丈夫だ。
「私の方こそ・・・嫌な態度をとり続けてごめんなさい。」
「本当だ。 この数日・・・苦しかった。
貴様が俺から離れるなど、許してやらん。
身も心もだ。」
そう言って、久しぶりに私たちは口付けをした。
お互いの気持ちが、つながっているのを確かめ合うように。