第21章 猛将の憂鬱 ~後編~
三成のその発言に全員が押し黙る。
家康 「三成のくせに・・・」
心に響きすぎてしまったその言葉に、家康は苦虫を潰したような表情を作って動揺を隠すしかなかった。
家康もまた、秀吉と同じように・・・
莉乃の元へ行き『あんた馬鹿だね』と言って思い切り抱きしめて安心させてやりたい気持ちをこらえていたから。
(信長Side)
三成は『私たち』という表現をしていたが、、それが俺を指し示していることに信長は気づいていた。
『傷ついているのが分かっているのに、
気持ちに寄り添うようなことをしていない』
『見放している』
か・・・
三成にしては、手厳しいな。
いや、三成だからこそ言えることか。
三成もまた莉乃を慕うものとして、自分の立場を鑑みて。
あいつなりに考えた結果の発言なのだろう。
我が軍の参謀は賢く思いやりがあり、嫌味なく人の感情を動かすのが上手い。
三成の軍師としての成長を喜ばしく思った。
確かに三成の言う通りだ・・・
心のどこかで莉乃の方から歩み寄ってくるのを受け入れる、という図式を望んでいたのかもしれない。
・・・俺はそのやり方しか知らん。
自分から歩み寄る、などしたことはない。
莉乃の愛情がまっすぐ俺に向かっていると知っていながら、あやつの行動を疑うようなことをしてしまった。
『私を信じられないのでしたら、恋仲としてやっていけない』
と莉乃は言った。
自尊心
うぬぼれ
沽券・・・
身一つで飛び込んでくる莉乃の前では、通用しないのかもしれないな。
まったく・・・
俺をここまで追い込むとは。
大した女を拾ったものだ。
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「莉乃を案じるでない。
あやつのことは・・・ どうにかする」
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信長のその言葉に、小さなため息をついた三成。
それは安堵と・・・
安堵とは真逆の気持ちが同居していたからだった。