第21章 猛将の憂鬱 ~後編~
「私は…この世に飛ばされてきて、家族も仕事も、友達も…
今まで築きあげてきた生活の全てを手放さなければならなくなりました。
それでも信長様を始め、武将の皆さんや針子の仲間たちに支えていただき、ここで生きていこうと決めたんです。
今日の女子会は…
私がこの世で初めてできた友人と初めての外出でした。
それをどれだけ楽しみにしていたか…
信長様は全てご存知のはずなのに。
尾行されたと分かったとき、悲しかったです。
信長様に権力があるとか偉いとか、そういった事を抜きにしてお話します。
私の彼として。
私を信じられないのでしたら、恋仲としてはやっていけません。
疑心暗鬼の上には信頼も愛情も築けませんから。
それに…
信長様のみならず、武将の皆さんも私を疑っていた訳ですよね。
今まで通り、皆さんの雑用はいたします。
ですが、信用されていないと分かった今。
今までと同じ感情で接することはできません。
…失礼します。」
そう言って莉乃は天主から出て行ってしまった。
___『恋仲としてやっていけない。』
頭の中で反芻するその言葉が胸を突く。
今まで夜伽相手は選びたい放題だった俺に…
今まで、恋だの愛だのは幻だと思っていた俺に…
愛するという感情を植え付けてきた莉乃
莉乃がいれば他の女など目に入らなくなっていた。
莉乃だけいてくれればそれで満足だった。
こんなにも手に入れたいと思った女は初めてだった。
『かれし』として恋仲になった事が、こんなにも俺の感情を揺すぶっていたとは…
この『やっていけない』という言葉にそれを気づかされた。
初めてできた恋仲に、初めて拒絶された痛みに襲われる。
「これも一興」と済ませられないほどの…