第20章 猛将の憂鬱 ~前編~
茶屋を後にした莉乃達が向かったのは、装飾品が立ち並ぶ露店。
次から次へと手に取っては、何やら吟味をしたあと商品を戻していく。
商人や町人に混ざるようにして身を隠しながら、莉乃たちを尾行する武将達。
家康 「なんだよ、あんなに見ておいて結局どれも買わないのか。」
秀吉 「さっき莉乃が試着していた簪(かんざし)、似合うと思ったけどな。後で買っておいてやろう。」
三成 「私は今、試されている方がお似合いだと思いますよ。ではこちらは私が贈り物にしましょう」
光秀 「二人共、買い物に来たんじゃない。任務を忘れるな」
その時、「あの野郎!!」と行って政宗が駆け出していく。
「待て!政宗!」という光秀の静止も聞かずに。
派手な出で立ちをした若い男3人組が莉乃達に声をかけていた。どうやらお茶を共にしないかと誘っているらしい。
「麗しい」だの「美人だ」の、褒めちぎっているようだ。
3人のうちの一人が、馴れ馴れしく莉乃の腰に手を回そうとしている。
「そこまでだ」
莉乃たちと男の間に割って入った政宗は、腰に回されそうになっていた手を思い切り叩き弾いた。
「茶なら俺たちが共にしてやろう。」
そう言うと眼光鋭く立ちはだかる。
慌てて逃げるように散っていく3人組。
「ま、政宗!? なんでここに??」
秀吉の次は政宗が登場し、針子の二人は目をまん丸にして驚いていた。
「ゆ、夕餉の買い出しだ」
「露天に?武将が?
しかも、『俺たちが』ってなに? 政宗、一人だよね?」
「あ、あぁ。 まぁ、細かいことはいい。『じょしかい』楽しめ。
これにてどろん、だ。」
そう言って足早にその場を立ち去る。
「何あれ…」
彩乃 「秀吉様と政宗様に偶然お会いするなんて、緊張しちゃった!」
夏希 「ねー、武将の方々をお見かけするなんて、針子の私達には滅多にないもんね!」
武将たちの元に戻った政宗は、秀吉同様…光秀にこっぴどく叱られた。
「お前達…少しは自制しろ。
男に声をかけられた莉乃がどういう行動をするか、も含めて行動を探っているのだ。
今日の任務は「尾行」だ。分かったな」
そう言うとため息をつく光秀であった。