第20章 猛将の憂鬱 ~前編~
___莉乃がいなくなった広間
秀吉 「光秀…さすがに天ぷらはないだろ、天ぷらは…」
光秀 「あのような艶のある唇で出かけさせられるか。
男を誘っているようなものだ。
油が付いているといえば拭(ぬぐ)うと思ったのだが。」
三成 「さすが光秀様! 熟慮されていた訳ですね。
確かに…あの唇はいやらしすぎましたね。」
政宗 「ったく莉乃は…
自分がどんなもんだか分かってないからな。」
家康 「普段の時だって莉乃は目立つのに、あの格好にあの化粧じゃ…
はぁ、めんどくさい」
光秀 「何がめんどくさいんだ?家康。 まだ何も起きてないが」
秀吉 「そういえば…莉乃の耳たぶに小さい何かが付いていたな。」
信長 「あれは『ぴあす』というものだ。
耳たぶを貫通させる穴を開け、そこに金属の耳飾りを通しておる」
秀吉 「!!!あいつなんてことを!!!!」
光秀 「あの娘にそういう趣味があったとは。覚えておこう。」
家康 「それをなぜ信長様がご存知なんですか。
そんなとこ見ないでしょ、普通。」
信長 「俺は莉乃の『かれし』だからだ。
事細かいところまで見る権利を得た。」
政宗 「は!? いつの間に…」
光秀 「ほう…これは面白い」
三成 「信長様、本当に莉乃様を行かせてよろしかったのですか?」
家康 「そうですよ。怪しすぎです。あんなにめかし込んで…
同行を拒んでたし。」
秀吉 「……………」
信長 「『かれし』としてあやつを信じてやらねば。
俺が同行するわけにもいかんだろう。
・・・貴様ら、分かっておるな」
家康 「ほら、出た。だからめんどくさいって言ったんですよ。」
政宗 「全然信じてやってねぇじゃねーか…」
信長 「くれぐれも、莉乃に悟られぬようにしろ。
光秀、裏仕事は得意だろう。今回の指揮を取れ。」
光秀 「…………御意」
こうして軍議は一旦解散となり…
安土城織田軍武将たちによる莉乃諜報活動が開始されることとなった。