第20章 猛将の憂鬱 ~前編~
「失礼します、お茶をお持ちしました。」
そう言っていつものように入室する。
武将達からちらりと向けられる視線も、いつも通り。
かと思ったら、今日はなぜか皆さんに二度見された。
政宗はピュゥと口笛まで吹いて。
三成「莉乃様! 今日はいつにも増して麗しいお姿ですね!どこかに行かれるのですか?」
秀吉「その格好どうしたんだ!?
化粧も…髪も…いつもと違うようだが…」
政宗「お前のその目、いいな。
いつもより黒目が大きく見えてそそられる。」
光秀「天ぷらでも食したのか、 唇に油が付いているぞ」
「今日はこれから城下の市へ出かけるんです。」
光秀さんの意見は無視して、うきうきと気分良く答える。
家康「城下なんていつも出かけてるでしょ。
なんで今日に限ってそんなにめかしこんでるの」
光秀「家康…なぜ怒り気味なんだ」
家康「全く怒ってません。
先に言っときますけど心配もしてません。」
光秀「お前もだいぶ、素直になってきたな。」
うんうんと頷いている光秀。
信長「今日莉乃は『女子会』だそうだ。」
政宗「じょしかい?」
武将たちの顔に『?』マークが浮かんでいる。
___つい先日…
想いを交わして『彼氏』となった信長様には、女子会のことを報告してあった。
「なるほど。
そのような行動を『女子会』と申すのだな。
貴様がこの世に来て始めての交流だ、行ってくるが良い」
そう言ってくれた。___
信長「女子会とは…
女が集まり、反物を探し歩き、団子と水菓子を食べ、帯留めやら髪留めやら簪やらの装飾物を物色し、また甘味を食して茶を飲み、議題のない話をとりとめもなくする会のことだ。」
威厳のある低い声で武将たちに説明している。
…確かにその説明で合っているけども。
信長様が説明するとちっとも楽しくなさそうに聞こえる。