第18章 傾国の紅粉 【豊臣秀吉 編】 R18
覆いかぶさるように腕の中に閉じ込められてしまった私に、逃げ場はない。
いつも優しく、気持ちを重ねるようにしてくる秀吉さんとは別人みたい。
まるで全てを奪いつくすような…
そんなキスを受け入れるしかなかった。
呼吸は苦しいのに、嫌じゃない自分がいる。
荒々しい雄に全力で求められているような、熱い気持ちが伝わってきて…
その熱が私にも移ってきた。
「んはっっ」
唇が離れ、呼吸を求めて二人の肩が大きく上下する。
「俺は…ホントの俺は、こういう奴なんだ。
莉乃の全てを奪い尽くしたいのに、お前に嫌われたくない一心で…
兄貴のような安全圏内から出られなかった。
頼れると思ってもらえているようだが…
惚れた女に手も出せねぇような意気地なしなんだよ。」
「秀吉さん…」
「お前の一生に一度の相手になれるほど、
できた男じゃないんだ…」
そう言うと私から離れ体を起こし、座って下を向いてしまった。
つられて私も体を起こす。
「さっきの私の話、ほんとに聞いてた?」
「あぁ、聞いてた。 だから俺は___」
「『もっと、秀吉さんのいろんな面を見たい』って思ってるよ、私は。
面倒見がいいお兄ちゃんの秀吉さんを好きになったんじゃない。
それに…本当の意気地なしだったら、欲に負けてもうとっくに手を出してるはずだよ。
意気地があるから、待っててくれようとしてたんでしょう!?」
「莉乃…」
「そういう所も含めて…好きなの。
秀吉さんじゃなきゃ、だから___」
「それ以上言うな」
そう言うと、腕を引かれ胸の中に閉じ込められる。
「お前に・・・そこまで言わせてごめんな。」
あごに指がかかり、上を向かされるとすぐに唇が重なる。
今までに何度もされた、優しい、気持ちを乗せた口付けだった。