第2章 真紅の彼方 ~後編~ 【織田信長】R18
___初めて見る信長様の上半身は… 男性そのものだった。
全体的に引き締まっていて、肩はしっかりしている。
細身だとは思っていたけれど、たくましい腕に割れた腹。
採寸の時に描いた立体図では知り得ることがない、熱を放つその素肌。
触れたい、そう思う自分に恥ずかしさを感じ目を離した。___
背中側に周り、袖から軟膏を取り出す。
信長様の肌はなめらかで、ところどころに傷や打ち身ができていた。
昔負ったであろう切り傷が治って筋のように盛り上がっている。
思わず、その跡を指でそっとたどる。
信長様が息を呑む音が聞こえた。
聞こえなかったふりをして、今回新しくできたと思われる傷に軟膏を塗り広げていく。
「背中の方はいいですよ、次は前に塗りますね。」
正面に周ると、先ほど見つけた手首の傷に軟膏を塗る。
ここにも、昔に追ったであろう傷があった。
(この傷を負ったとき、薬を塗ってくれる誰かはいたのかな。)
私の知らない過去に、少しだけ心がチクリと嫉妬する。
手首、二の腕、肩と上がってきて、顔の横に走る傷に薬を塗ろうと手を伸ばしたした瞬間、突然手首を掴まれた。
「い、痛かったですか?」
「いや・・・・
貴様が話したかった事とは何だ?」
信長様の瞳には熱が灯っていた。
あの三日月の晩よりも強い熱が。
その時、、、お互いの間を交差する気持ちの先が、見えた。
「ようやく、気づきました」
「何?」
「…あの命令はまだ有効ですか?」
「は?」
「……褥を暖めろ、という命です」
信長様の目が細められ
「有効だ、と言ったらどうするのだ?」
熱量を増した瞳が私を焼き尽くしそうになる。
「暖めたいと、、思います。」
「貴様は言ったではないか 『私のことを愛し、慈しんでくれる方と』 と」
「そうです。 それにやっと…気がつきました。
あなたが与えてくれた想いと慈しみの気持ちを、私もお返しします。
私が私の意思でそう、したいのです。
…受け取って、いただけますか?」