第18章 傾国の紅粉 【豊臣秀吉 編】 R18
あぁ、可愛い。
あんな馬鹿げた発言をしたとしても、それも莉乃の可愛さに見えてしまう俺は…
相当惚れているな。
…いや、今はそんなことを考えている場合ではない。
あのような発言をしてしまうほど酔っているのなら、早く部屋に返してやらないと。
誕生日だからと政宗、光秀あたりが相当飲ませていたからな…
もっと目を光らせておくべきだった。
頭の中でこの先やることを瞬時に書き出す。
女中に湯殿の用意をさせ、莉乃を湯浴みに行かせる。
その後は茶を飲ませ、寝かしつけてやる、と。
明日の針子の仕事を減らすように言いつけておかないといけないな。
「信長様、
莉乃は相当酔っているようですので、先に部屋に返します。」
そう言って莉乃を立たせると、他の武将たちの視線が刺さる。
「早速、命令実行か、秀吉」
光秀がにやりと笑ってくるが、
「は? 何を言ってるんだお前は。
莉乃は『夜伽』の意味を履き違えてるんだ。
莉乃がそんな事を命令するはずないだろう!
飲みすぎて頓珍漢になってるんだ、部屋で休ませてくる。」
好奇の目を無視して莉乃を連れ出した。
ったく、野獣どもが。
明日の軍議ではあいつらに武将としての品位を持つように言わねば。
これも頭の中に書き付けた。
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信長「くっっ、阿呆が」
__珍しく、信長が声に出して笑っている。
家康「もしかして秀吉さん…」
政宗「あぁ、あの顔は…意味を履き違えてるのは秀吉の方だな。どっちが頓珍漢だ」
光秀「バカみたいに真面目なところがあるからな、あいつは」
三成「という事は… 命令は実行されないということ、ですよね」
家康「だといいけどね。」
光秀がおや、という顔をする。
光秀「家康、実行されたくない理由でもあるのか?」
家康「えっ?いや、別に・・・深い意味はありません」
政宗「あいつは俺がもらう。秀吉なんかに先越されてたまるか」
信長「おい、莉乃は俺のものだ。越すも何もあらん。」
光秀「さて…飲み直すか。」
そう言って、武将たちは落ち着かない気持ちを抱えたまま、再度飲み始めたのだった。