第18章 傾国の紅粉 【豊臣秀吉 編】 R18
「___今宵、夜伽を命ず。 宴のあと、私の部屋に来るように。」
まっすぐ俺の目を見て放たれたその発言だったけれど…
それが本当に俺に向かったものなのか、そしてその内容を理解するまでに時間がかかった。
どこかで盃が落ちる音がした、どうせ三成あたりだろう。
いつもだったら、駆けつけて片付けしてやるが…
そんなことは気にならない位に頭の中が混乱している。
___「莉乃が命じることなんて大した内容じゃないでしょ、どうせ」
家康がほんの数十秒前に言ってたこの言葉・・・
先がこう繋がるとは思ってもみなかった。
『大した内容』過ぎて、正直、動揺している。
『夜伽』って…
俺が知ってる『夜伽』だよな? 男女の……
いやいや、そんなはずはない。
莉乃はまだこの時代での分からない言葉も多いから、意味を違えて覚えてしまったのだろうか。
もしかすると、『添い寝』のような意味で言ったのかもしれないな。
確かに、「夜伽』には夜通し付き添うことの意味もあるし。
あぁ、きっとそうだ。
酒に浮かれて気持ちが大きくなってあんなことを口走ってしまったんだろう、
女がこんな場で使う言葉ではない事をしっかり教えておかないと、とんでもないことになるな、今のように。
頭の中に書き付ける。
今日はあいつの誕生日だ。 添い寝くらいなら、いいか。
いくら恋仲とは言え、あいつは・・・
とにかく、俺が大事にしてやらなきゃならないのだから。
「秀吉、返事をせえ」
信長様にたしなめられる。
「えっ!あっ、は、はい」
「貴様、莉乃の話を聞いていたのか」
「き、聞いておりました…」
「しかし…いつの間に俺の所有物に手をつけたのだ、猿め。
まぁ、今宵は誕生祝いだ、目をつぶってやる。
しかと努めを果たすように。」
「は、はい…」
ちらりと莉乃を見ると、真っ赤になってうつむいていた。