第17章 傾国の紅粉 【明智光秀 編】 R18
ふん、兄貴気取りが。
お前が妹以上の感情を持っていることぐらい、とっくにお見通しだ。
それに、他の武将たちの感情もな。
海千山千の武将たちがこぞって莉乃に恋心を抱いているのだ、その分まで大切にしてやらねばという責任感は当然俺にもある。
決して口に出すつもりはないが。
莉乃と俺は元来、消して交わることのない反対の場所にいる人間だ。
光と闇、陰と陽、そんな風の。
いつも周りを明るく照らす莉乃が本気で俺のような者に惚れるわけがない・・・
その思いが、莉乃と共に過ごしている時でさえ病巣のように小さな痛みをもたらしていた。
だから俺は・・・
莉乃に迷いが無いと確証を持てるまで、深い関係にはならないと決めていた。
泣かすような事をしたくないのは、俺が一番そう願っていることなのだから。
信長様にだけは、俺たちの関係を報告した。
一応、莉乃は信長様の所有物という立場から、報告するのが筋だと思ったからだ。
驚いてはいたものの・・・
俺の覚悟を知った信長様は「泣かすでないぞ」と言い、それ以上のお咎めはなかった。
普段は可憐で野に咲く花のように笑う莉乃が、、口付けをすると艶のある『女の顔』になる。
昼間、武将たちの前で見せる笑顔とは違う、妖艶な。
その変化と表情に何度も流されそうになり、自制心を保つのに必死だった。
荒れ狂う己の欲を鎮めるため、何度苦しい時を過ごしたか・・・
それを知らずに、バカ娘が・・・
莉乃を湯浴みに行かせたのは、酔を覚まさせると同時に、冷静になる時間を与えたかったからだ。
酔った勢いでなどと後悔などして欲しくない。
言い訳も与えたくない。
それは俺も同じだったから、湯浴みに行くと告げたのだが。
とにかく・・・
莉乃にああ言ってしまった以上、湯浴みして向かうしかないな。
さて、どう出るか、俺の可愛い莉乃。
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