第2章 真紅の彼方 ~後編~ 【織田信長】R18
___その晩。
いつものように湯浴みを済ませた私は、鏡台の前で髪をとかしながら寝る準備をしていた。
この1ヶ月…お互いの距離が離れていた。
しかし今は、距離は近いのに遠い気がする。
そんなことを考えていると…
ポスポスと障子を叩く音がした。
「起きてるか?」
その声は光秀さんだった。
「はい、今開けますね。」
障子を開けた私に放ったのは、驚く一言だった。
「行ってこい」
「え?」
「軍議は終わって、天主に戻られた。行くなら…今だぞ」
「え??」
(二度は言わん)という顔をしていた光秀さんは・・・・
私の頬にさっと唇を合わせると
「駄賃はもらった」とだけ言って去っていった。
今の行為がどういう意味を成すのか分からないけれど、意識はすぐに信長様に向かった。
時間が惜しいような気がして、湯上りの浴衣姿に簡単に髪をまとめただけの状態で部屋を出る。
袖には家康からもらった軟膏がしのばせてあった。