第4章 ジェイド【中編】
「………あ、えっと…はは…そうなんですよ!皆楽しそうに魔法を使うから、良いなぁって思うようになっちゃって!」
「魔力とは、体内を巡る血液よりも強固に本人と強い結び付きを持つものだからね。それが出来てしまうなら、この世は魔法使いで溢れかえってしまっているよ。」
「…そっか、そうですよね。」
考えてみれば、当たり前の事だったと思う。強力な薬でも出来ないことが体液を貰うだけで使える様になるわけが無い。
何度か彼に会う度薄々分かってた。少しずつ違和感はあったから。分かっていた、んだけど…。
「?なんだオマエ、急に顔色真っ青だゾ?」
「…なるほど、オクタヴィネルに唆されたな?」
「トレイくん?」
小さく囁かれたトレイ先輩の言葉は私の耳には届いたが、ケイト先輩には聞こえなかったらしい。なんだか気まずい空気になってしまった。
「……私、そろそろ寮に戻ります!グリムもあんまり遅くなっちゃ駄目だよ。」
「待った、俺が送るよ。」
「大丈夫です!走って帰りますから。」
「いいから。行こう。」
「トレイ先輩って結構強引ですね…。」
「…トレイ、ちゃんと彼女を寮まで届ける様に。」
「あぁ、任せてくれ。」
トレイ先輩に手を引かれ半ば強引に私はハーツラビュル寮から連れ出された。一人で考えたかったのに、これではそれも叶わない。静かな道を、トレイ先輩と歩く。
「…で、さっきの話だけど。ジェイドの奴に何か言われたのか?」
「何か言われたってわけじゃ…。」
「ならどうして泣きそうな顔してるんだ?何か騙されたとかだと思ったんだが。」
「騙され……そうですね………そう、なのかも。」
「はっきりしない返事だな…。俺に話すのは嫌か?」
「…誰にも言いませんか?」
「約束するよ。」
私は歩きながらぽつりぽつりと初めて中庭で魔法擬きを使った事から話始めた。トレイ先輩は驚きもせず、横槍も入れずただ、頷き聞いてくれる。全て話し終えた所で、彼は浅く溜息を零した。
「なるほどなぁ…アイツらしいやり方というかなんというか。」