第4章 ジェイド【中編】
「本当に魔法が使えたと思って嬉しかったんです。でもそれが全部嘘だったかと思うと、ちょっと悲しくて。…でも、なんでジェイド先輩がそんな事をしたのかが分からないから、怒っていいのか泣いていいのかもよく分からないんです。なんか、心がぐちゃぐちゃしてるというか…。」
「えぇ、なんでそんな事されたか分からないって…それにお前、幸運の壺とか簡単に売り付けられそうなタイプだな。」
「突然酷いこと言いますね…買いませんよ…。」
「騙されやすい、って事だよ。」
「それは否定出来ない。」
現に騙されたからこうして今ショックを受けているわけだし。魔法が使えると嘯かれ、弄ばれる私を見て彼は一体何を思っていたのだろう。夢が叶ったかのように見せる代わりに、虚構を馬鹿みたいに信じて喜ぶ私を見て楽しむ…それが対価だったのかな…。
でも、何故だろう。最低だって思うのに、もうあんな人嫌い!って気になり切れない自分が居る。この感情は何?
「もまだ頭の整理が出来てないみたいだし、ちゃんとアイツと話した方が良いだろうな。」
「そうですね。もしからかってただけって言ったら物理で対抗してやろうと思います。」
「ははっ!からかってた、って事は無いと思うけど。ジェイドにとってメリットなんてひとつも無いしな。あんまり無茶はするなよ。お前は女なんだから。…さて、寮に着いたし俺の見送りはここまでだ。」
「お気遣いありがとうございます。トレイ先輩はお兄ちゃんみたいで安心するから好きです。おやすみなさい!」
「あんまり気軽にそういう事言うなよ…。おやすみ、。」
トレイ先輩から背を向け、寮の中へ足を運ぶ。明日は、ジェイド先輩との約束がある。どうあってもこれが最後になるのは間違いない。夜会うその時までに、私の心もしっかり整理しようと思いながらお風呂へと向かった。