第4章 ジェイド【中編】
ペンを振ると、キラキラと光の粒が宙に浮く。それはギュッと集まり、複数の白い光の球体に変わる。私が先程使った魔法と多分同じ。だが圧倒的に数が多く明るさも段違いであった。
「うわぁ、凄い!蛍みたい!」
「ほたる…?聞いたことありませんね。」
「虫なんですけど、お尻がピカピカ光るんです。幻想的で、すっごく綺麗なんですよ。」
「なるほど…陸にはまだ僕の知らない生物が沢山居るんですねぇ。触ってはいけませんよ。火傷してしまいますから。」
「あ、危ない…触る所だった…。」
漂う光へ伸ばした手を引っ込める。エネルギーの塊なんだもんね…そりゃ火傷もするわ。
ジェイド先輩は顔を上げ中庭に設置された時計を見た。私も釣られて見てみると、いつの間にか一時間も経っている。やば、そろそろ寝ないと明日に響く。
「…残念ですが、戻りましょうか。あまり遅くなると明日が辛いでしょう。寮までお送りしますよ。」
「そんな、一人で戻れますよ!すぐそこですし!」
「貴方は女性です。何かあってからでは遅い。自分の身一つ、守る力が無いのですから。それにここへ呼び出したのは僕なので。」
「…そういう事でしたら…よろしくお願いします。」
「喜んで。」
光は弾ける様にして消えた。楽しい時間はあっという間に過ぎるのだと実感する。私はジェイド先輩と肩を並べ、オンボロ寮へと踵を返す。歩いている間も、他愛のない話は続いた。
「また明日も、ここへいらっしゃいますか?」
「えぇっ、うーん…どうしよう…。」
「来られるのであれば、明日は僕が寮まで迎えに行きましょう。遅い時間なのは、来る時も同じですし。」
「まだ行くって言ってないんですけど…!」
「来て下さらないのですか?僕はとても楽し時間を過ごす事が出来たのですが…。」
「うぐ…。」
眉を下げるジェイド先輩に言葉を飲み込む。私だって、楽しかった。楽しかった、けど…会う度キスをすると思うとやっぱり恋人になったみたいでなんだかソワソワしてしまう。彼はそんなつもり毛頭ないだろうに。
「駄目でしょうか?」
「い……きます。明日もよろしくお願いします…。」
「ふふ、さんならばそう仰って頂けると思っておりました。」
結局、断れず流されてしまった。
寮の門に辿り着いた。今日はツノ太郎も居ないらしい。私は振り返りジェイド先輩に頭を下げた。