第4章 ジェイド【中編】
ぼんやりとする頭をはっきりさせようと頭を勢い良く横に振った。というか、体液貰うだけで良いならこんな舌絡めたキスじゃなくても良いのでは…!?
ハッとして居ると、思考を遮るように手にペンが乗せられる。ジェイド先輩のマジカルペンだ。
「本日はどの様な魔法を使いたいのですか?」
「あ、えっと……光の魔法!暗い夜道や洞窟の中で良く使われたと聞いています。ペン先に球体状の光の塊を出して歩くとか…。」
「あぁ、敵に遭遇した際はそのままエネルギー弾として使うことも出来る優秀な魔法ですね。貴方に使えるか分かりませんが試してみましょう。頭の中にしっかりイメージをして、ペンを振ってみて下さい。」
私は立ち上がりジェイド先輩の隣に立った。ペンを握りゴクリと生唾を飲み込む。
「よーし…光よ、いでよ!」
「…これはこれは。とてもささやかな光で…。」
ペン先からフワッ、と柔らかな光の塊が出て来る。それはとても小さくピンポン玉よりちょっと大きい…かな…?程度だった。周囲を照らすには非常に不十分である。けれど、ペンを上、下、右、左と動かせばその動きを真似て光はついて来る。
「おおぉお…!見てください、ジェイド先輩!ちゃんと私に従ってついて来る!」
「そうですね、貴方の魔法ですから。」
ジェイド先輩は嘲るように笑ったけれど私にとっては立派な魔法なのだ。こんな非現実的な事が何時でも出来る魔法士達は毎日楽しくて仕方が無いだろうな。つまらない授業ばかりが繰り返される元の世界とは、大違い。
「そろそろ切れてしまいそうですね。折角です、壁に向けて飛ばしてみては?その大きさなら壁が壊れてしまう事も無いでしょう。物を投げるイメージで振り降ろしてみて下さい。」
「うぅ…ほんとに一瞬だなぁ。…えいっ!」
キャッチボールする時のようにペンを振り上げ、思い切り降ろすと球体は真っ直ぐ飛んで行き煉瓦の壁に当たって消滅した。先輩の言う通り、傷一つ出来ないのが逆に悲しい。
「終わっちゃった…。ジェイド先輩は他にどんな魔法が使えるんですか?」
「見たいですか?」
「あ、対価が必要なら大丈夫です。」
「貴方もバカでは無いようですね…。良いでしょう、特別に無償で見せて差し上げます。」
先輩も立ち上がったので私は拝借していたペンを返した。彼は一度それを懐に戻し両手でズボンの土を払ってから再度取り出す。