第4章 ジェイド【中編】
「ふふっ……いえ、まさかご自身で分からないと回答されるとは思っていませんでしたのでつい。嫌でないので有れば良いでしょう。今宵もさんの望む通り、魔法を使う愉しさを思い出させて差し上げましょうか。」
「…お……お願いします。」
「さぁ、こちらへどうぞ。」
「…はい?」
「どうぞ。」
「あっ、はい。」
ぽん、と自分の膝を叩くジェイド先輩に首を傾げる。乗れと?
意味が分からず聞き返すと高圧的な笑顔で同じ言葉を繰り返され、従う以外の選択肢は無くなった。この人偶にフロイド先輩っぽい雰囲気出て来るの怖い。やっぱり双子だな。
おずおずと、彼の脚の上へ乗り上げる。それでも視線の高さは、私が勝つことは無くこれでやっと同じ位の高さになる程度だった。
「…おや、顔が茹で上げられたエビのように真っ赤ですねぇ。」
「こんなに、くっつかなくてもキス出来るじゃないですか…。」
「この方が口付け易いので。背の低い貴方に合わせるのも大変なんですよ。」
「リーチ兄弟からしたら私だけでなく皆チビですよ!」
「それもそうですね。さぁ、目を閉じて。口を開いて下さい。」
軽やかに流された。私は今にも飛び出して来そうな位ドキドキ高鳴る心臓の音を聞きながらギュッと瞼を降ろす。言われるがまま震える唇を開いた。
頬に手袋越しの指先が触れる感覚にぴくりと瞼が揺れる。優しく撫で、軈て唇が重なった。
「ふ、ぁ……。」
「ん……。」
舌先をチロチロと擦り合うソフトなものから徐々に咥内を食い荒らす様な深いものへと変わっていく。舌腹のざらついた感触が口蓋を舐り、舌の付け根を撫ぜる。互いの唾液が混ざり、小さな水音が響く。
「んっ…ん……!」
「はッ…。」
不意に頬へ寄せられた手とは逆の手が腰に回された。グイッ、と身体を引き寄せられ密着が深まる。唇の隙間から時折触れる熱い吐息と、次第に薄まっていく酸素に頭がぼうっとして来た。この人、舌長いしキス上手すぎ…。
何度も首の角度を変えては触れ合う。ちゅ、ちゅ、と唇に吸い付く甘いリップ音が鼓膜を揺らす。漸く離れると舌先同士唾液が繋ぎ途中でプツリと切れた。
「……耳まで赤い。」
「前より、長かったから…!」
「合意の元でしたのでつい張り切ってしまいまして。」