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【R18】短編小説【ツイステ】

第4章 ジェイド【中編】



この人が言うと冗談に聞こえない。打算で物事を考える人だもの。本音も混じっていると思う。
なんとも複雑な気分になり、唇を曲げる。するとジェイド先輩は徐に何かを思い出したかのように私の顔を覗き込んだ。

「…そうだ、貴方に聞こうと思っていた事が有るんですよ。」

「ふぁい!?な……なんでしょ…痛っ!」

「おや、大丈夫ですか?そんなに飛び退かなくても。」

あまりの至近距離に驚き反射的に頭を後ろに引いた。が、木を背もたれに話していた事をすっかり忘れており思い切り後頭部をぶつける。痛い…。ズキズキと痛む箇所を抑えていれば、ジェイド先輩の掌が優しく打ち付けた場所を摩ってくれた。

「うぅ……それで、聞きたい事とはなんでしょうか…。」

「昼にさんがされた質問をそのまま返してみようかと思いまして。」

「昼にした質問…。」

「はい。貴方は僕と口付けをするのは嫌ではないのですか?」

口を開いたまま、固まってしまう。なんてドストレートな質問だ。それを昼間にしてしまったのは私の方なのだけれど。変な汗がダラダラと流れる。直ぐに言葉が出てこない。

「ええ、と…。」

「僕たち人魚は口付けをする習慣はあまり有りません。ですので元より抵抗は少ないのです。交尾も至極単純なものですし、そもそも子孫繁栄以外に目的も薄いものですから。しかし、人間は違うでしょう?直に触れ合うのは特別で、本当に親密になった相手……所謂恋人とする事が主だと聞き及んでおります。」

「その通り…かと…。」

彼の言葉の通りだと思う。でも、私はジェイド先輩の事が好きなのかと聞かれたらそれが分からない。そもそもこの人と知り合って日も浅いのだから。確かに、ドキドキするけどそういう経験が無ければ大抵の人はドキドキするのでは?

「さん?」

「…嫌じゃない、のは間違いないです。キスする事が嫌だという気持ちより魔法を使う感動と面白さが私の中で勝ってるのかな…。自分でも、よく分からなくて……。」

ジェイド先輩は数度ゆっくりとした瞬きを繰り返した。そして間を置いて静かに吹き出しそのままクスクスと可笑しそうに笑う。

「ちょっと、人が真面目に考えてるのになんで笑うんですか!」
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