第3章 ジェイド【前編】
「腹減ったぁー。今日の日替わり定食は何かなーっと。」
「オレ様は肉が食いたいんだゾ!」
「いつも通りじゃないか。監督生はどうするんだ?」
「そうだなー…あ、今日のパスタ美味しそう。」
「おや、お目が高い。」
「「「うわぁ!?」」」
「ふなぁ!?」
突然後ろから会話に割り込んで来た声に私達は飛び上がる。エース達2人と1匹に関しては、以前こき使われたトラウマが蘇るのだろう、引き攣った顔をしていた。そんな私達を後目にジェイド先輩は何事も無かったかの如く淡々と話を続ける。そう、彼と話す機会が以前より俄然増えたのだ。至る所で良く会う気がする。
「本日のパスタに使われているキノコは、僕が取ってきたものなんですよ。是非とも監督生さんに味わって頂きたいものです。」
「そういえばジェイド先輩、山が好きなんでしたっけ。」
「はい。元々モストロ・ラウンジの食材として使用していたのですが、多過ぎると文句を言われてしまいまして。捨てるのも忍びないので時折こちらの食堂で使用して頂いているのです。」
「へー!それじゃあ、これにしようかな。」
「ふふ、ありがとうございます。」
折角推してくれたのだから断るのもなんだか違う気がする。それに実際厨房から漂って来るキノコの匂いはとってもいい匂いだ。クリームソースと絡まって凄く美味しそうだし。
「のヤツ、あのウツボといつの間に仲良くなったんだゾ…。」
「オレが知るかよ…。アイツマジで猛獣使いかなんかの才能有るんじゃねーの…?」
ヒソヒソ話してるつもりだろうが丸聞こえだ。私に聞こえてるということは多分ジェイド先輩にも聞かれているだろう。チラリと彼に視線を向けると、ニッコリと笑った。清々し過ぎて逆に怖い。なんとなく気まずさを感じている中、不意に背中にトンと彼の身体が寄せられる。近い近い。
「ところで…中々モストロ・ラウンジまでお越し頂けないみたいですか何か理由がお有りで?」
「えッ!えーっと……その……結構恥ずかしい、といいますか…。」
ピッタリと密着したまま静かに囁かれた言葉に嫌な汗が流れた。自然と視線も泳いでしまう。
「そうですか…それは残念です。僕は貴方が目を輝かせ、愉しそうに魔法を使う姿が好きなのですが…。」