Good old fashioned lover boy
第9章 輝ける者の秘密
※ヒロインside
いつものように喝采を浴びてステージを後にする、という日はもうすぐなくなるかも分からない。
そう思いながら裏にある控え室に戻って私は化粧直しを始めた。
端にある席に座ってなるべく派手にならず目立たないように…。
こうしてると場末にあったキャバレーを時々思い出す。
奴の下に置かれるようになった頃、私はよくそこでショーの舞台に立っていた。
しかし、それ以外は際どい衣装に身を包んだ当時の私よりも大人な女性達ばかりで何だか肩身の狭い思いをしてたような気がする。
そして私は今のように大部屋の端に座ってこうして化粧をしていた。
と言っても手つきの慣れてない私は何度も失敗してはやり直してばかりだったので、近くにいた女性達が見かねて化粧を施してくれたことがあった。
中には世話焼きな人もいて、時々お下がりでドレスや靴、アクセサリーを貰ってマジックのネタとして使っていたのは今となってはいい思い出だ。
でも、その思い出も誰かに語ることはないのかもしれないと私は感じていた。
今日という日は私にとっては最期の日なのかもしれない…。
でも、心の底では「彼」に会えるかもしれないというわずかな希望もあった。
決めた以上は進むしかない…。
私は自身のボディーガードの目を欺いてバールの裏口からこっそりと抜け出した。
辺りを見回すと「こんばんは」と聞こえて振り返るとそこにはあの「彼」がいたのだった。